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お知らせ

上天草 日々の風景 『砥石山を訪れて』

こんにちは、移住アドバイザーの吉田です。 

先日、上天草市大矢野町にある砥石(といし)の採石場へ行ってきました。
現在、上天草市には3件の製造業者がありますが、今回訪れたのは江樋戸(えびと)と呼ばれる地区にある採石場です。以前から興味があったのですがなかなか行く機会がなく、砥石に関してお話を伺えることをとても楽しみにしていました。
なぜ、砥石に興味があったのか?
それは、移住してから魚をさばくことを覚え、砥石で包丁を砥ぐことが面白かったからでしょうか。
普段通っている道から絶壁の石山が見えていたことも理由のひとつです。

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 焼き物でも有名な天草ですが、焼き物で使われる"陶石"は天草市にある温泉で有名な下田で採れ、江樋戸では主に"砥石"の材料を採石しており、白い陶石と違って薄茶色をしています。
ここで採れる石は、白く変質した流紋岩(りゅうもんがん)に鉄分が混ざって出来て、年輪のような模様を描いているので  "木目石"  と呼んだり、虎の柄に似ていることから"ドラ目"とも呼ぶんだそうです。 

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純度が高い下田の石に比べると不純物が多く強度が劣るため焼き物にはあまり向いていないそうですが、一時期は輸出用の食器や送電線で使われている"碍子(がいし)"の材料としても利用されていたとのこと。
 そして、その歴史は平安・鎌倉時代まで遡り、大矢野にある庄屋さんにはこの時代から採石していたという記録が残っていて、朝廷が置かれた京都の遺跡からも発掘されるそうです。
見せて頂いた資料の中には、「1823年に長崎の出島へ来航したシーボルトらが、オランダに持ち帰った日本の大工道具300余点の中に"アマクサイシ"と書かれた砥石があり、現在もオランダのライデン国立民族学博物館にシーボルトの収集品のひとつとして陳列されている」と書かれていました。
ある時期には北前船(きたまえぶね)と呼ばれる船で江樋戸から台湾へも輸出されていたようです。


 採石された石は適当な大きさに割って良質な部分を切りだした後、比較的安価な木目石と白い部分を厳選した付加価値の高い"備水砥(びんすいど)"の2種類に分けます。
砥石は荒砥(あらと)・中砥(なかと)・仕上げ砥(しあげと)の3種に大別されますが、天草の砥石は程良い堅さのため中砥にむいているとのことです。
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■白く絹のように軟らかい触り心地の備水砥(びんすいど)

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■大きな刃物を高速で回転させ、厚みを2cmに切りそろえた建材用の木目石

 

 

  

 

 

刃物の砥ぎ方も地域によって異なることなので、砥石の大きさ、堅さを要望に合わせ変えているそうです。
西日本から九州地方は、砥石に対し刃物を前後に動かすため、安定感があり、広い面積を砥げるサイズの少し軟い石が好まれ、東北地方では、刃物に対し砥石を動かし刃を研ぐため、持ちやすく少し堅めの石が好まれるとおっしゃられていました。

 写真3-1.JPG  ■西日本・九州地方は、砥石に対し刃物を動かす

写真4-1.JPG  ■東北地方では、刃物に対し砥石を動かす

 今ではどこでも同じものが手に入り大差ない道具ですが昔の道具をみてみると、その地域の産業や文化よって材料や形も少しずつ異なり、その地域の風土を表しています。
風土の違いで使い方や形が違うことがとても面白く、他の地域との比較によって私達が住む地域の文化を知ることに繋がるのだと感じました。

 今回訪れて思ったことは、当たり前に見慣れていることも、"知っているようで知らない"ということ。
砥石ひとつをとっても奥が深い。
今も残っている昔のモノや文化は今の生活との関わりを知る機会が少ないですが、出来上がるまでの過程を見たり聞いたり、そして歴史を探っていくことで新たな発見がありそうです。

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 食習慣や暮らしの変化によって包丁を研ぐ人も少なくなり国内の需要は減少傾向だそうですが、最近は海外での日本食ブームの影響もあり、海外での需要が少しずつ増えてきているとのことでした。
外国の料理人が日本の包丁を使っている話を聞いたことがありますが、日本を訪れた際にお土産として包丁を購入する人も多いそうです。包丁と合わせて砥石も海外で必要とされているんですね。
地域の産業や文化が海外で注目されているなんて、素敵な事です。

企画の内容を考えると、他との組み合わせで面白いものができそうです。
砥石が製品になるまでの採掘現場の見学会。合わせて、My包丁の砥ぎ体験。そして、砥いだ包丁を使って魚をさばいて、料理するなんてことはどうだろう?包丁を砥ぐ面白みと、切れ味の良い道具で料理を楽しみたい。

そんなことを考えながら、今日のことを振り返りました。

今後も上天草市の面白い情報や素材を求めて活動していきますので、よろしくお願いします。