移住者の声

第二の人生は 70歳をこえてからが本番

森さん

  • 第二の人生がスタート
  • 公民館のような我が家
  • 心をひらいて地域に溶けこむ

まるで小さな公民館! みんなが集まるコミュニティ

“暮らしを自分で整えること”の楽しさを実感
まるで小さな公民館! みんなが集まるコミュニティ

最愛の母親を看病の末に看取り、大矢野町の亀の迫(かめのさこ)地区に単身移住した森さん。この場所を選んだのは、余生を海のそばで過ごしたかったこと、大勢いる孫たちが、いつでも遊びにこられる場所をつくりたかったからだという。自らを「亀の迫の爺(じい)」と呼び、少し照れた様子で取材陣を歓迎してくれた。

雨漏りやシロアリ被害が大きかった空き家バンクの家を購入した森さん。見に来た誰もがさじを投げ、なかなか買い手がつかなかったという“訳アリ”物件だったそうだが、森さんは「ここは(家の)柱がしっかりしとるけん、大丈夫!」と購入を決めた。

雨漏りは屋根を確認したら「瓦が1枚ズレていただけだった。ラッキー!」と満面の笑顔。そしていまも、こつこつ、ひとりで修繕まっただなか。「時間だけはあるけん、意外と楽しいとよ。」と、“暮らしを自分で整えること”の楽しさを実感している。

まるで小さな公民館

小ざっぱりとしつつ清潔感あふれる家は、まさに“男の城”といった感じ。居間の手前にはバーカウンターがあり、奥には小あがりになった“舞台”が!「みんなで集まって、歌ったり楽器を演奏したりできるかなと思って」。。

お酒やコーヒー、音楽・映画鑑賞やカラオケ(多趣味!)を、存分に楽しめる空間に仕上がりつつある。「集落の人らがしょっちゅう遊びに来る。ちいさな公民館みたいになってるね」。

亀の迫は決して大きな集落ではないが、人と人との結びつきを大切にするエリアだという。地域のイベントに参加したり、公民館裏の大きな枝木を伐採したりと、森さんはすでに地域と馴染めているようだ。敬老会では、初対面の人たちを前に、自慢の歌を披露して早くも人気者。

「ちゃんと対話したらね、悪(わる)か人はおらんけん。自分から挨拶をする。心をひらく。そんな風に人と向き合えば、どこででもやっていけるもの友は友を呼ぶ。楽しい方が得でしょ?」。

コツコツ、のんびり。気楽に生きるマインドが大事

自給自足も楽しめる
コツコツ、のんびり。気楽に生きるマインドが大事

「歳をとっていくとね、もう自分の好きなように、楽しんだもんがちだと思う。人って、楽しむために生まれてきたと思うんで。そう思わない?」

限られた予算内で、自給自足も楽しめるような、終の住処(すみか)を探していた森さん。そんななか出会ったこの物件で、新しい人生が幕を開けたというわけだ。

田舎暮らしの醍醐味

少子高齢化、人口減少などの社会課題とともに増え続ける空き家問題は、このまちでも深刻だ。ここ亀の迫でも、長らく買い手が見つからなかった空き家に森さんが越してきたことで、数年ぶりに灯りがともった。ご近所さんに、魚や野菜など旬の食材を持ってきてもらうことも多いそうで、田舎暮らしの醍醐味といえる“物々交換”も楽しんでいるという。

このまち特有の、あたたかな人間関係の広がりを感じる日々だ。

自分の“場所”をつくる

リタイア後、森さんのように、いきいきと“自分”を生き・語れる人はどのくらいいるだろう。その秘訣を尋ねると、こんな答えが。

「色々と無理をせんかったらね、楽しんでいけるんです。自分の“場所”をつくるって大事だから、まずは自分に合う(家)を買って、自分の好みに合わせていこうかな、とかね。暑ければ木陰にいればいいし、そんな風に、自然体がいいとたい」。

第二の人生は、“70歳”をこえてからが本番

第二の人生は、“70歳”をこえてからが本番。「昔の大工さんがつくる家はね、意外と適当とたい(笑)。だから、きれいにぴしゃっと直そうとせず、自分でバランスとって生きていけばいい」。

妥協はしないけど、背伸びもしない。等身大の暮らしぶりを実践する「亀の迫の爺」は、コツコツ、のんびり、まるで亀さんのように。自分の道を切り開いている。

森さん

御船町から2023年春に上天草市に移住。

  • 移住時の年代:70代
  • 家族構成:1人
  • 移住スタイル:単身

※ インタビューの内容は2023年12月の取材時のものです
※ 協力:上天草市セカンドライフ支援ネットワーク