移住者の声

転職なき移住 スローな海辺の暮らし

楠さん

  • 新築平屋の住居兼建築事務所
  • 60代後半で海辺に移住
  • 趣味はマリンアクティビティ

自然素材の住居兼事務所を自ら設計

建築事務所「KCMアトリエ」
自然素材の住居兼事務所を自ら設計

建築事務所「KCMアトリエ」の代表をつとめる楠さん。海が見える樋合島の港近くに、自ら新築の平屋を建てたのは2020年冬のことだ。木の香りに安らぐ1階部分が住まい、十分な広さの屋根裏を事務所として使っている。

50年以上建築の仕事に関わっている楠さんが設計する家は、自然素材にこだわった心地よい設計、揺れに強い構造などに定評があるそうだ。昭和56年以前の建築建物の耐震診断も行っている。その実績から、熊本地震における災害復興住宅の建設にも関わってきた。

実は楠さん、自らが住む家を「生涯で3軒建てた」(!)そうで、さすがは建築士!といったエピソードを語ってくれた。上天草に移住する前に住んでいたのは熊本市の二本木。その前は益城町。60代後半になって心機一転、のどかな自然に囲まれた場所に住居をうつしたくなったことと、海のそばで暮らしたくなったなどの理由から、上天草への移住を決めた。

小さなえびすさん

空き家バンクと不動産業者の物件を色々と見てまわり、現在の場所にあった古い家屋を解体し、自分好みの家を自ら新築した。

「この場所の雰囲気と、海が目の前にあるというロケーションのすべてを気に入って決めました。港のそばなので漁船はあるけどあまり機械音もしなくてね、意外と静かなんですよ。朝方、漁師さんたちは5時30分くらいに出発されるけど、そこまで音は気にならないかな。住環境がよくてね」。

家の目の前には、小さなえびすさんが祀られているのも特徴的。
「えびすさんがかわいいんです。見守ってくれているみたいで、いいですよね。この近くに3体くらいいらっしゃるんです」。

プロとしての顔をのぞかせる

これまで建てた家と今回の家との違いを尋ねると「家は、3回建てないと理想の家にならない」という言葉もあるじゃないですか。時代時代でデザインのトレンドもあるし、好みも変わるし。結局、3軒建ててもこれがベストなのかはまだ分からないですね(笑)。もっとこうすればよかった、いまもこうしたいという思いは常にあります」と家づくりの話となれば、プロとしての顔をのぞかせる。

そして自身の経験から、上天草市においても地震に強い家づくりに寄与していきたいと語ってくれました。

海が教えてくれること

何と言っても、この景色
海が教えてくれること

さらに、移住してからの心身の変化を聞いた。

「何と言っても、この景色でしょう! 何だか、気持ちもの〜んびりになっちゃってね。もう毎日がリラックス状態。なかなか仕事モードじゃなくなって、ちょっと困っているくらいです(笑)」と本音もちらり。

とはいえ、新たに地元の大工さんと縁がつながったり、新規で近くの旅館から仕事を依頼されたりと、地域のつながりも徐々に広がっているという。

中古で買ったという自船

そんな楠さんの趣味は、68歳ではじめたというダイビング。年に数回、沖縄本島や久米島、宮古島に渡り、美しい海でのダイブを楽しんでいるそう。

上天草での趣味は、やはり釣り。取材時は、目の前の港に中古で買ったという自船を係留させていたが、思ったより維持が大変とのことで、「せっかく手に入れた船ですが、一旦手放すことに決めました」と柔らかな笑顔で話してくれた。海、船、釣り。まさに「大好きなマリンアクティビティの宝庫」である島暮らしを、存分に楽しんでいる様子がうかがえる。

心豊かに過ごすニュー・ライフ

もちろん、家事もお手のもの。「今朝も親子丼をつくりましたよ。主夫して、仕事して、遊んで…のんびり田舎暮らしと思っていましたが、毎日意外と忙しいです」と充実の様子だ。

転職をともなわず、いまの仕事を精力的にこなしながら、60代後半での移住となった楠さん。穏やかな波音や潮の香りを身近に感じながら、心豊かに過ごすニュー・ライフ。“日常の光景”となった海の前で、穏やかな表情を見せてくれた。

楠さん

熊本市から2020年冬に上天草市に移住。

  • 移住時の年代:60代
  • 家族構成:1人
  • 移住スタイル:単身

※ インタビューの内容は2023年12月の取材時のものです
※ 協力:上天草市セカンドライフ支援ネットワーク