移住者の声
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可能性と創造性をひろげる 夫婦の“生き方”
奥濱さん
- 地域活性化企業人
- 高台の家でリモートワーク
- 旅するように暮らす・はたらく
上天草市初の地域活性化企業人
「地域活性化企業人」―3大都市圏の企業に勤める在職2年以上の社員を、地方自治体に一定期間派遣することができる制度。地方創生における、総務省の施策のひとつだ。
東京に本社がある(株)サントラストで、デザインやECサイト運用などを担当している妻の瞳さんは、2023年3月に上天草市の龍ヶ岳町に移住。もともとコロナ禍以前から、リモートワークが導入されていたことから、数年前にはすでに東京23区を離れ、神奈川県足柄上郡の山の近くで暮らしていた。
そんな折、上司から「地域活性化企業人」の話を聞き、制度を利用したいと申し出た。せっかく移住するなら今度は「できるだけ海の近く」「自然豊かで暖かいところ」…そんな条件をもとに移住地を探し始め、目に止まったのが上天草市の募集案件「釣りで地域を盛り上げる事業」だった。
自身のスキルや趣味が活かせるプロジェクトと直感し、社内・家族・上天草市との折衝を重ね、2023年4月から同市初の「地域活性化企業人」として着任した。
夫婦ともに、釣りやキャンプなどのアウトドアが趣味。
「いつも言い出しっぺは私(笑)。釣り好きの友人の実家が天草にあって “いつか行きたいね”と2人で話していた場所だったんです。まさか住むことになるとは! 夫の祥(ショーン)の実家が沖縄なので、住んだところがないところに行きたいという思いが強く、上天草を選びました」と、快活な表情で語る。
夫婦ともに場所を選ばない職業であったことが移住の後押しとなり、海のみえる眺望のよい高台に建つ一軒家を購入。生命力あふれる植物園のような“外”と、2人の好きなものが心地よく調和した“中”とのコントラストが鮮やかだ。
瞳さんは週に3日、釣りで地域を盛り上げるブルーツーリズムのプロジェクトや釣りを活用した新たな観光体験プログラムの創出などに携わりながら、東京での仕事はリモートで。彫金師である父に師事し、「Echoes Brand」の名でジュエリー制作を手がけるアーティスト・祥さんの工房も自宅内につくった。
夫婦は、基本的に自宅で仕事を行なっている。「この家に最初に来たとき、海が見える縁側で、ゆっくり2人でコーヒーを飲んで暮らしている絵が浮かびました。この“眺め”だけで決めましたね。毎日きれいな夕陽が見えて、海の水面が天井に映って…本当に幻想的で、毎日癒やされています」
好きなときに 好きな場所で 好きなことを
約50世帯の住民が暮らす集落に若い夫婦が移住したので、地域住民からも歓迎されている。2人の同世代はほぼいない。
「引っ越して半年くらいは70歳・80歳のお友達ばかりできました(笑)。愛犬の散歩が日課なので、その道中でお話しすることも多いですね。みんな明るくてフレンドリー、すごく親切です」と笑う。
もともとオープンマインドな雰囲気をもつ彼らにとって、“島暮らし”ならではのコミュニケーションの距離感は合っているようだ。住み始めてからの心身の変化を尋ねてみると、「“自然の近くにいる”ことの影響力がすごく大きい」と話す。
「本当にデトックスを感じるというか、心がぐっと穏やかになりましたね。もともとこういうライフスタイルを求めていたので、やりたかったことが実現できているなって。特に私は“今やりたいことを今やる”という考えなので、直感を信じてよかったなという感じですね」。
移住は、「定住」とは異なる。だから、必ずしも「ずっと住み続ける」という選択肢をしなくていいのでは? と瞳さんは話す。
「私はもともと引っ越しが好きで、環境の変化に対応するのもけっこう得意。だから上天草に来てからの毎日はすべてが目新しくて、発見ばかり。次の週末はどこ行く? 何して遊ぶ? といつも2人でワクワクしていて、最高なんです。逆に週末に雨が降れば無理して出かけず、家でゆっくり過ごそうか? と柔軟に切り替えられる」。
仕事や思想、“自分の持ち物”を大きく変えることなく夫婦は移住し、情熱にしたがって生きている。「祥が働く場所を選ばない職人だから、どこでも住めるようにしたくて、私もPC1台でできる仕事を選んでいるのだと思います。
移住して間もなく1年。関東以外に住んだことがなかったので、いまだにこっちの方言を聞くだけでキュンとしてしまうし、星や、空を眺めるだけで毎日感動します。あと、地元の方から教えてもらった教良木地区の「宝幸水(ほうこうすい)」という湧き水をよく汲みに行くのですが、この水がとってもおいしくて!うちではお料理に使ったり、コーヒーを淹れる水に使ったりしています。こういう、何気ない日常にしあわせを感じる時間が増えました。“いま生きているな”って実感する毎日なんです」。
奥濱さん
神奈川県から2023年春に上天草市に移住。
- 移住時の年代:30代
- 家族構成:2人
- 移住スタイル:夫婦
※ インタビューの内容は2023年12月の取材時のものです
※ 協力:上天草市セカンドライフ支援ネットワーク